どうして歯を磨かないといけないのでしょう
歯の表面にねばねばした物質を出してしがみついている細菌の巣であるプラークを除去するためです。 この細菌が虫歯や歯周病の原因になっています。
歯を磨くことによって
(a)細菌の巣であるプラークを直接取り除きます。
(b)細菌の栄養源となっている食物を取り除くことによって、間接的に細菌に栄養を与えないことにより、細菌の数を減らします。
(c)虫歯や歯周病の原因となる細菌は嫌気性菌と呼ばれ、空気を嫌う細菌なので歯肉のみぞを洗うことにより酸素が歯周ポケットに入り込み、細菌にダメージを与えることが出来ます。
なお、歯ブラシも唾液の中の細菌で感染します。コップの中の水に数滴キッチンハイターをたらして、1000倍くらいに薄めて、使った歯ブラシをよく水洗したあとで翌日まで浸しておいてください。次に紙面で伝えられることだけを列記します。言葉だけでは難しく感じられるかもしれませんね。歯磨きの磨き方はぜひ来院して直接指導してもらってください。
(1)歯並びには個人差が大きいので、自分の口の中を鏡と、手鏡を利用して、どの辺りが磨きにくい箇所なのかよく観察しましょう。
(2)あまり大きな口をあける必要はありません。 特に歯の外側(ほっぺたに面するところ)を磨くには、口を大きく開けてしまうと、頬の筋肉がすでに引っ張られた状態にありますので、奥まで磨くのは難しくなります。 その状態で歯ブラシを一番奥まで差し込んでいるつもりでも、実際には絶対に届かないように解剖学的にできているのです。(下あごの筋突起と呼ばれるものが、口を大きく開けると前方に移動して、ブラシの進入を邪魔するのです。) 歯の内側(舌のある側)を磨く時は、大きく開いても大丈夫です。 磨く場所によっては一時的に大きく開かないと磨けない場合も出てくるからです。
(3)歯と歯の間をうずめている歯肉を歯間乳頭といいます。この部分がよく腫れてくる位置です。 物がはさまったりするのもこの位置ですので、充分に磨く必要があります。 歯と歯がくっついている点を接触点といいます。 この接触する点は上の歯と下の歯では位置が違います。 歯を噛み合わせをする真上から見ると、奥の下の歯では歯の幅の中間点で接触します。 しかし上の奥歯では舌のある側からの接触点までの距離は、ほっぺたのある側から接触点までの距離の2倍あるのです。 つまり上の奥歯は内側(舌のある側)から接触点までの距離が遠いので、内側からブラシを充分に挿入しないと磨けていないことになります。
(4)歯と歯の間は、上から見ると朝顔の花のように、あるいはラッパのように開いています。この朝顔の花の形が、内側と外側に2つできますので、それを合わせるとツヅミのように見えるので、鼓形空隙と呼びます。 この鼓形空隙、つまり歯と歯の間を磨くことは大事なのです。 磨くというよりは、歯の根のほうから歯の頭の方向へブラシの毛先を向けながら、挿入してゆかねばなりません。 歯の間の奥に進行するほど、歯の間が狭くなるので、それなりの力が必要となります。 歯ブラシを差し込んだら、その位置で上下方向に長い楕円となる運きをしてください。 移動させる時には必ず一旦歯からブラシを離して、位置を決め直して当てるようにし、移動距離は1本の歯づつ動かすようにします。
(5)歯肉に炎症があれば、痛みや出血は当然です。 正しくブラシを当てたときの痛みと出血は、恐れず避けず、それらがなくなるまでしっかりと当て続けてください。
(6)歯ブラシは原則は軽く持ちます。 歯ブラシの毛先の点を生かして、引っかいて線を作る感覚です。 強く当てすぎると、毛先がたわんで滑っているだけで磨けていません。 前後には軽く振動させる程度の振幅で、決して距離を稼ぐような磨き方はしないようにしてください。最大でも歯の横幅2本分の動きです。 しかし、歯の間の鼓形空隙を磨く時は、それなりの力はいるので、歯ブラシのヘッドに近い部分の取っ手に、しっかりと親指を当てて磨く必要もあるときもあるのです。
(7)右の奥歯の外側を磨く時は下あごを右へずらすように動かし、左の奥歯の外側を磨く時は下あごを左へずらすように動かします。(回転するのでなく、あごをずらすのですよ) そうすれば筋突起というものや咬筋という大きくて力のある筋肉の位置が外側後方へと移動するため、、ブラシの挿入が楽になるのです。 また、左の奥を磨く時は顔を右に回転して磨くと、歯ブラシの挿入が容易になります。
(8)歯磨剤は、最初のブラッシングの時は使わないほうがいいです。 清涼感があるので少し磨いただけですっきり感が出て、磨けていないままで終ります。 最後の仕上げに、せいぜいブラシの毛の幅の4分の1くらい使えば充分でしょう。 マウスリンスを使うなら仕上げとして30秒以上はブクブクさせてください。
なお、人類の歯ブラシの歴史は意外に古いのですよ。 2007年9月にスペインのピニージャ・デル・バジェで発掘された、約6万3400年前のものとみられる2本の臼歯により、ネアンデルタール人が歯の衛生状態を保とうしていた可能性があることが知られています。 発掘に当たった古生物学を専門とするルイス・アスアルガ教授は、「これらの歯に先が鋭いものを使ってできた溝があったことから、小さな棒を使って歯を磨いていたことが分かる」とコメントしており、 驚きですね。 現代人も負けないように歯磨きに取り組みたいものです。
具体的な歯ブラシとしては、はじめは柔らかめのものを使う方が、歯肉を傷つけずに良いかもしれません。 CiメディカルのCi203sくらいから始められればよいでしょう。ネットで安価に売ってます。 また磨きにくいところはCiメディカルのワンタフトブラシが有用です。 歯磨きは殺菌性が大きく、研磨剤がなく、低発泡性のウェルテックジェルコートF、歯肉活性化作用のあるリペリオ歯肉退縮用、洗口液としてはCiメディカルのオーラルクールがあり、この3点セットで使用するのはスグレモノです。歯肉が強化されれば硬い歯ブラシに変えていけばよいでしょう。
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