口臭

気になりませんか?



 日本人は自分の口臭のあることに気づく人は少なく、逆に他人の口臭には厳しいようです。

八重垣健氏らの調査では自分の口臭が気になる人は19%であり、他人の口臭が気になる人は43%という報告からも推測できますね。

地域格差も大きいようです。

日本人全体では14%の方が気にしているようですが、東京のビジネスマンでは70%が気にしているというのが保健福祉動向調査で伝えられております。

口臭の原因物質は研究が進んでいます。
口の中で剥がれ落ちた細胞や流れ出た血に含まれるタンパク質が、細菌由来のタンパク分解酵素によって分解されて、メチルメルカプタン、硫化水素、その他の硫黄を含む揮発性硫化物(VSC)がつくられこれが主な原因物質とされています。

病気ではない生理的な口臭では硫化水素がVSCの中で一番の原因物質です。

VSCは、舌の見える表側の舌背と呼ばれる所の後方3分の1の中央部分で、アルカリ性の環境で産生されます。

朝起きたときに感じるにおいの原因です。

食事をすると剥がれた細胞も飲み込まれますので、口臭は減少します。

寝ている時は唾液の出方が少ないので、剥がれた細胞を洗い流せないのも口臭の原因です。

女性ホルモンが多くなると、歯肉上皮をはがしたり、歯肉の溝の浸出液を増加させるので、月経時には口臭がひどくなると考えられています。

そのほか最近では不適切なダイエットによる口臭があります。ダイエットは食事制限だけでなく、運動をして基礎代謝を上げておかないとうまくいかないようです。食事を少なくすると摂取カロリーが少なくなり、それ以上痩せると体が危険という信号が発せられ、基礎代謝を低くするという防衛反応が働くからです。適度な運動をしていない場合には、筋肉での熱産生が低下して、代謝の速度が遅くなることも、 基礎代謝の低下に拍車をかけ、肝心の脂肪の燃焼効率が抑えられてしまいます。過度の食事制限などをしてしまい、体が飢餓状態になり基礎代謝が落ちると、 体がなんとかエネルギーを生み出そうとして、結果的に不完全燃焼をしている過程で出てくる「副産物」が「ダイエット臭」なのです。

歯周病から来る口臭では、歯周ポケットから剥がれ落ちる細胞や、浸出液が多くなってくるので、メチルメルカプタンが大量に発生して、口臭の主な原因となります。

ただ、歯周病による口臭は、歯肉ポケットから起こってくるのが大半であると思いがちですが、全VSC量の60%が舌苔から作られるという報告もあります。

4mmのポケットをもつものは、4mm未満の者より舌苔量は4倍多いというデータもあり、相関関係はあるようです。

その他にVSC自身が歯肉の細胞を通過しやすくさせる作用があり、細菌の毒素などを歯肉の中に入りやすくさせて、歯周病を増悪させる悪役です。


また、精神的なものが影響する仮性口臭症や、口臭恐怖症といったものがあるので、他科との連携が必要なこともあります。

治療法としては、舌背でVSCが作られる量が多いのですから、ここの清掃が大事です。

舌をできるだけ前に突き出すと、山ができます。

この頂上より前の舌の先のほうへ向かって、舌ブラシで100グラムくらいの軽圧で10回くらいこすります。決して前から後ろにはこすらないように注意してください。

ここでくれぐれも注意して頂きたいのは、舌の表面は、消化器の内側と同じように粘膜になっていることです。

口腔内粘膜は、他の粘膜と違って、痛みに非常に鈍感なのです。

理由は、解剖学的には口腔内の痛覚は他の粘膜に比較して非常に少ないからです。

痛みを感じないため、過剰に磨きすぎることがあるので、傷つけないようデリケートな力で磨きましょう。

舌を磨きすぎて、舌の表面にある繊細な舌乳頭を破壊してしまうと、唾液が白くにごり、唾液自体が臭くなって逆効果となることがあります。

また、舌を磨くときは、歯磨剤を絶対につけてはいけません。

含有する界面活性剤が、舌乳頭を破壊し、行き過ぎると、舌表面から出血が起こったり、味覚異常が起こるようになるでしょう。

この危険を理解した上で、磨くのでなければ、、効果はあるにしても、舌磨きは止めたほうがいいでしょう。



比較的安全な方法としては、洗口剤を使う方法があります。

亜鉛は細菌のタンパク分解酵素を働けなくし、またVSCと結合して揮発性でなくする働きがあります。

また、細菌がVSCを作る成分と塩化亜鉛が結合することで細菌のエサでなくなるようにする働きがあります。

酸化亜鉛が0.22%以上の洗口剤は劇的に口臭を下げますが、日本は0.1%以下でないと許可されてませんが、充分効果はあります。

ハイザック〔発売元ハセガワまたはビーブランド〕という商品名で発売されています。

北米でよく使われる水道水の浄化薬の一種である二酸化塩素よりは効果が高いようです。

ただし、にんにく、ねぎ、アルコール、唐辛子、香辛料などは食べてから最大約72時間体内にとどまりますし、口臭の成り立ち方が違うので、これらに対しては効果がありません。

口臭は自分が気がつかないことがないままに、周囲から敬遠されていることが多く、最近では発がん性に関与していたり、老化の促進の可能性さえいわれているようです。

また、1日の唾液分泌量は約1.5リットルと言われています。

老化や緊張した生活の持続等で、唾液の分泌が少なくなると「口腔内の殺菌・自浄作用」が低下し口臭の原因となることもあります。

口臭は、他の人がそれを感じることのできる他臭症と、他の人は感じることができないけれど、自分では確かに臭気を感じている自臭症とに分けられます。

他臭症の場合は、直接的な原因が特定しやすく、比較的容易に解決できます。

しかし、自臭症の場合は人によって口臭が発生する原因や背景は複雑で、直接的な原因が特定できないため難症例となります。

他臭症の場合は緊張していなくても常に病的な口臭がします。

それに対して、自臭症の場合は精神的緊張の少ない時はあまり口臭は気にならず、精神不安や緊張を感じると口臭を自覚したり、緊張が持続すると他の人にも感知できる他臭症となります。

精神的な要因などによって一時的に唾液の分泌が抑制されたときには、唾液中に溶けている新鮮な酸素が欠乏し、酸素の少ない環境ができあがるために嫌気性菌の活発な活動を許し、さらにはそれを助長する口呼吸によって口臭が発生すると考えられます。

口の中の環境が酸性に傾き、酵素の働きに微妙に影響を与えて、口臭を発生させている可能性も考えられます。

甘いものや、コーラなどの炭酸飲料水は酸性に口の中を傾かせる可能性があるので、控えたほうがよいという説も今まではこの理由で成り立っていました。しかし、唾液不足で口臭のあるものに関しては、むしろスプーン1杯から3杯の砂糖をなめたほうが、砂糖の酸で唾液が出やすいので即効性があるという説もあります。

同様に殺菌力という点では抹茶をスプーン1杯から3杯上あごにこすりつけるようにすると、カテキンの殺菌力で口臭が消えます。

一時的な効果としては、ふくらし粉として使われる重曹(炭酸水素ナトリウム)などをかなり薄めてうがいするのがよいかもしれません。

弱アルカリ性ですので、口の中の酸を中和します。

ただし、酸とぶつかるときに炭酸ガスを発生しますので、これは生理的口臭の原因ではありますが、差し引き改善の方が効果としては大きいので心配ありません。

魚や肉の臭いのついた「まな板」を重曹で洗うと、汚れだけではなく臭いもきれいに取れますね。

魚料理をすると手に魚の臭いが染み付いてしまいますが、この時も重曹は効果的です。

手元にないときはパンシロンや太田胃散など、胃薬の類にはたいてい含まれていますので、代用してください。

その方がそのまま水に溶かしても安全な濃度ですので分かりやすいでしょうか。

その他舌を思い切り外に突き出して、唇の周りを20回ほど回転させれば、唾液も出やすくなりますし、舌を突き出すことにより、全体の筋肉が弛緩し、副交感神経優位となり、さらさらした唾液が出て、雑菌が一挙に減り、口臭は緩和されます。

気になって、ご自分で解決できないときは、歯科医師に相談してみましょう。

 


歯の話1
TOP