なぜ必要なのでしょう?



歯というのは顎の骨の中に根っこが埋まっていて根の部分や、骨の状態が見えません。

その上に歯肉がかぶさっているので、 歯の頭(歯冠部)だけしか見えません。

しかも頭の部分のムシ歯にしても、歯は硬い組織で出来ているので、 中がどうなっているのか、外からは分かりません。

そのため、歯や骨の中の様子まで分かるX線を使う必要がでてくるのです。

被爆の危険のあるX線を利用しない検査の方法を使えばいいのじゃないかと思われる方もおられるでしょうね。

しかし、歯の治療でレントゲン写真を撮るには必然的な理由があるのです。

内科や産婦人科で良く使われている「超音波検査」は、超音波を使用しているので被爆の問題はありませんが、超音波は骨や空気の中を通れないので歯科の検査に使うことは出来ません。

「MRI」は磁気を利用した検査法で、これも被爆の問題はありません。

しかし、骨の中の病気は見えるのですが、カルシウム密度の高い歯の中の様子までは見られません。

「CT」は画像を得る手段にX線を使用していますが、体を輪切りにして撮影するのにむいていて、ムシ歯などを見るのには適していません。

またこれらの検査法は、不適当な上に比較的高額です。

X線は物質を透過する性質を持っています。

通り抜けるX線の量は、構造物の密度の差、つまり吸収の差によって異なるので、その吸収の強弱を画像にしてとらえることができるのです。

たとえば、肉眼ではムシ歯が無いように見える場合でも、、レントゲン写真を見ると、明確に針のような穴が開いていて、下で広がっているのが分かるということになります。

歯の内部の組織が腐って、歯の根の先に膿が溜まっているときや、歯の根の先に病気があるときなど、そこだけ骨が無くなっているのが簡単に見ることが出来ます。<

安全性を考えるには、X線被爆による人体への影響として「確定的影響」と「確率的影響」を考える必要があります。

確定的影響というのは、一定の被爆線量を超えなければ絶対に起こらない影響を言います。

その越えてはいけない線量を「閾値(いきち)」といいます。

流産や奇形の閾値は0.1Gy(グレイ)です。

0.1Gy(グレイ)というボーダーラインを越えなければ、胎児の流産や奇形は起きないということになります。

口の中にフィルムを入れて撮る小さなレントゲン写真の場合、卵巣が浴びる被爆は0.079μGy(マイクログレイ)だそうです。

大きなレントゲン写真(パノラマ写真)の場合でも、56μGyです。

1μGy(マイクログレイ)は、1Gy(グレイ)の百万分の一になります。

つまり一度に126万回以上、歯医者さんで小さなレントゲンを撮ると危険だということになります。

それでも妊婦の方のレントゲン撮影には慎重に対処します。

たとえレントゲンを撮るとしても、鉛入りの防護服をきて被爆を最小限に抑える努力をします。

万が一、歯医者さんでレントゲンを撮らなければならなくなってしまったとしても、以上の点をご理解くださり、過剰な心配はなさらないようにしてください。

残りの「確率的影響」とは確定的影響のように、ボーダーラインともいえる閾値を問題にするのではなく、どんなに少量の被爆でも起こるかも知れない影響を指します。

危険性はどのくらいでしょうか。

歯科のX線撮影による患者様へのX線の量は、通常ならば極めて短時間内に受けるもので、特定の部位が被爆する形になります。

歯医者さんなら、歯の周辺ですね。

通常の歯科の小さなX線写真の1回の撮影で「ガン」や「遺伝的損傷」が起こる確率は100万分の1だそうです。

診断1件当たり有効線量(mSv)(ミリシーベルト)を比べて見ましょう。

胸部直接撮影は0.13、頭部CTは1.09、腰椎は0.78、胃の透視は4.15です。

歯科の口内法は0.0163〜0.0391、パノラマは0.0399〜0.0436です。

他の医学領域と比べても、少ない被爆量であることがお分かりになると思います。

技術の進歩によってさらに被爆量は下がってゆくことと思います。

なお、私たちが1年間に浴びる自然放射線の量の平均は約2.4ミリシーベルト(世界平均)です。

内訳は、空気中にあるラドンという放射性物質から1.2ミリシーベルト、宇宙からやってくる宇宙放射線による被ばく量が0.4ミリシールト、地面から約0.5ミリシーベルト、食べ物から約0.3ミリシーベルトです。

これと比較しても、歯科に関しては、格段に影響は少ないと考えられます。