不思議な改善法があります



歯周病は35歳から45歳で80%の方がかかっており、45歳から55歳では88%の方がかかっていらっしゃるというデータが歯科疾患実態調査で報告されております。

歯周病を「単に歯が抜けるだけの病気」と片付けてしまうのは大間違いです。
最近の研究で歯周病は全身に悪影響を及ぼすことがわかってきているのです。
特に糖尿病と密接な関係があるほか、突然死の原因になりかねない心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めたり、失明や手足の切断につながるような重症になってしまったりするのです。
まずは糖尿病です。頻尿や喉の渇き、倦怠感のほか足がつるのは糖尿病の症状です。食べ物が歯に挟まる、歯ぐきから出血するのは歯周病の症状です。
この2つの病はお互いを悪化させていくという恐怖のスパイラルを作ります。
何がお互いを悪化させてしまうのでしょうか?
 そのメカニズムは次の通りです。歯周病になってしまったことで形成された歯周ポケットに歯周病菌が溜まってしまうのが発端となります。
ここに免疫細胞である白血球が菌を退治しに集まってきます。
 この時、白血球が歯周病菌の出す毒素に触れることで、「TNF―α」と呼ばれる阻害物質を出します。
これが血液中のインスリンの働きを妨げてしまう作用があるのです。
インスリンは健康な人の体内で変動する血糖を適度に調整する役割があるのですが、この働きが低下すると、糖尿病の症状が悪化してしまうことがあります。
そして糖尿病が悪化すると血糖値が高くなり、今度は歯ぐきの毛細血管の血流が悪化して、血液が行き渡らず歯周病菌を退治できなくなってしまいます。
こうして歯周病による歯ぐきの炎症が糖尿病を悪化させ、さらに歯ぐきの炎症を進行させる――。という悪循環に陥りかねません。
わずか半年で重度の糖尿病で倒れてしまった患者もいるぐらいです。
逆に糖尿病患者に歯周病菌を減らす治療をしたところ、それまでよくならなかった「ヘモグロビンA1c」と呼ばれる過去1〜2カ月の血糖値の状態を示す指標が劇的に改善して、症状がよくなったケースが報告されています。
歯周病菌が血管内に入ると血栓ができやすくなり、突然死を引き起こしかねない心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めるという研究結果も出ています。
歯周病菌は心筋梗塞の原因である動脈硬化を進行させることがあるのです。
メカニズムは次の通りです。
口の中に住んでいた歯周病菌は、食事中などで傷ついた口の中の粘膜の毛細血管から血管内に入り込みます。
その歯周病菌の刺激により動脈硬化を誘導する物質が出てきて、血管内にプラークと呼ばれるお粥状の沈着物ができることで血液の通り道が狭められ、心臓の冠動脈を硬化させると言われています。
このことはヒトの大動脈の動脈硬化症と呼ばれる患者さんの血管の中から5〜20%ぐらいの割合で歯周病菌の遺伝子が見つかっていることからも確認されています。
もうひとつ、おそろしいのは「バージャー病」という聞き慣れない病気と歯周病の関係です。
手足の末端の血管が詰まり、炎症がおき、皮膚に痛みや潰瘍を起こし、最悪の場合は手足を切断しなければならないこともある病気です。
実はバージャー病にかかったすべての患者が歯周病だと診断され、その進行度合いは中度から重症です。
痛み、または潰瘍がある部分の血管から採血し、検査を行った結果、血液からは歯周病菌が検出された一方で、正常な箇所からは歯周病菌が検出されませんでした。
 歯周病菌は血栓をつくりやすく、皮膚の内側の細胞に進入するとの報告がされています。
口の中にとどまらず、体全体に行ってしまい、最悪の場合バージャー病を引き起こすとみられます。
これが心臓の近くで起これば心筋梗塞、脳の近くで起これば脳梗塞となる可能性があるのです。

誰しもがこの病気とお付き合いをしなければならない現状ですが、歯ブラシを効果的に扱う方法を身につけることや、歯科医院で定期的(3ヶ月に一度)に検診を受けて、歯石を取ってもらうことが一番の予防法です。

しかし、現実にはなかなか改善しない症例のあることも事実です。そこに民間療法的なものや、漢方薬療法などが介在する余地があるのでしょう。

緑茶の粉末を一つまみして、口の中で混ぜているとカテキン効果で細菌が減少するというものもあります。



意外なところから発見されたのは、カビに効く薬に一般名アムホテリシンB、商品名はハリゾンシロップ〔富士製薬〕という24ml入りのお薬です。

歯周病は細菌が主役のはずなので、カビを殺す薬が効くはずもありませんが、これがある種の歯周病にはとても効果あるということです。

まず、通常の歯磨きを充分にしたあとで、ハリゾンを1ml口に含んで3分くらいクチュクチュします。

次に歯ブラシでや歯間ブラシでよくこすり付けます。
できるだけ長い時間〔最大30分〕口の中でじっとしています。

苦しくなったら時間が短くても捨ててもかまいません。
捨てたあともできるだけうがいをしないようにしています。

特異体質の人は別として、この程度のものなら害はありません。
これを毎日繰り返すと、かなりな効果が期待できる人もあります。
ただし、保険では認められていませんので、御注意ください。

むしろ私のお勧めは、乳酸菌の入ったビオフェルミンなどの錠剤を一日5回くらい歯を磨いたあとで、よく噛んでうがいせずにそのまま放置する方法です。

これなら比較的安価ですし、飲み込んでも腸によいものですから、安心です。

乳酸菌の中でも、20代の健康な人の口の中から見つかったLS1を歯周病菌と一緒に培養すると、24時間で歯周病菌を死滅させたとの報告もあります。

このタブレットを毎日5回、2ヶ月服用すると、歯周病菌が20分の1になり、口臭も3分の2の人で消失した、との記事が2002年に山陽新聞に記載されたことがあります。

実際に私が試したところでは、ビオフェルミンでも充分に効果はあるように思います。

そのほかには唾液を沢山出せば、口の中が洗い流されて清潔になりますので、そういった工夫も必要です。

たとえば、よく噛むことによって唾液腺を刺激するので、50回噛みとは言いませんが、せめて20回噛み位することも必要でしょう。
また、舌を上下左右に動かす舌運動も唾液を出すには効果があります。

ついでながら、普通の電動歯ブラシでは歯と歯の間は磨けないので、歯間ブラシを使う必要があります。
垂直運動するような電動ブラシ〔ツインペッカー〕ならいいでしょう。



そのうち同じ様なものは普及するでしょうね。

なお、歯肉疾患の原因となる口腔細菌を死滅させる方法に新しい光(正確に言えば "青い光" )が照らされました。
 Forsyth研究所(米ボストン)応用分子光医学実験室長のNikos Soukos博士は、「歯周炎の原因となる重要な病原菌の中には、光線に対して感受性の高い物質を産生し集積するものがある」といいます。
同博士によれば、こうした病原菌を特定の波長に曝露(ばくろ)すると、数秒間である程度死滅することが判明しました。
このことから、骨や歯の喪失を招く歯肉炎を予防、抑制または治療するにあたり、青色光が有用であることが示唆されました。研究結果は医学誌「Antimicrobial Agents and Chemotherapy」に掲載されています。
 また、この青色光による治療は有害な病原菌を死滅させる一方で、善い働きをする有益な細菌数を増大させることも判明しており、Soukos博士は将来、口腔内の細菌のバランスを健常な状態に保つ手段として、光線を用いる方法が実現するものと推測しています。
近い将来、青い光による治療法も開発されるかもしれませんね。

次のことも歯周病を進行させる因子となります。歯科医院でよく相談してください。
1.歯ぎしり、くいしばり、かみしめ
2.不適合な冠や義歯
3.不規則な食習慣
4.喫煙
5.ストレス
6.全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
7.薬の長期服用

 

 


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