意外な関係がありますよ



歯に関係する細菌が増えると 結構恐ろしいですよ。

例えば歯周病のために深くなった歯と歯肉の間のみぞ、いわゆる歯周ポケットが5ミリあると、、ポケットの内側にできた潰瘍の面積は8センチ四方、つまり64平方センチメートルにもなります。

ご自分の手のひら一杯に潰瘍ができていると考えれば怖くありませんか?

潰瘍の細菌を殺しに白血球と言う兵隊が集結してきます。

このとき白血球から放出される「サイトカイン」や「プロスタグランディン」といった生理活性物質が血液の中を流れて、心臓、肺、子宮などの臓器に悪影響を与えます。

心臓においては血管の詰まる病気、たとえば心筋梗塞などに悪影響を与えます。



 歯周病で血管が詰まりやすくなるのは、細菌感染によって血液を固まりやすくする物質が血液中に増えるからだと考えられています。

歯周病の人は歯グキが健康な人に比べて、 冠状動脈疾患…1.5倍 、 心疾患による死亡・・・1.9倍 、致死性虚血性心疾患・・・2.2倍 、 心筋梗塞の発作…2.8倍も多いのです。

特に25歳から49歳の比較的若い世代の心臓病を引き起こすリスクは特に高いことがアメリカでは報告されています。

心筋梗塞や動脈瘤などでは、病巣から歯周病菌の中で最もよく検出されるポルフィロモナス・ジンジバリスが実際に検出されたという研究があります。


肺では、歯周病があると、口の中の細菌が呼吸によって肺に吸引され、肺炎を起こすこともあります。老人になったり、他の病気で体力が落ちていると、特に起こりやすくなります。

プラークには数百種類の細菌が存在しますが、そのなかに肺炎の原因菌が含まれていることもあります。

通常は口の中では酸素の少ない環境ですが、唾液が少なくなったり、歯の数が少なくなったりして酸素の多い環境に変わるとその環境の好きな肺炎菌は突然増えだして飲み込みやすくなるのです。

こういった誤嚥性肺炎の研究は、ある老人施設で常に口の中をきれいにしている人には、発生がほとんどないというデータをもとにスタートしたそうです。

高齢者の割合がかなり多くなっている現在、比較的多数のご家庭にも介護状態になった高齢者は、見受けられるようになりました。

口の中の衛生管理、つまり「口腔ケア」が命をも左右しかねない大切な問題になってきていることを充分にご認識ください。



子宮に関しては、歯周病は喫煙の害と同じように早産(低体重死出産)を起こしやすくします。

米ノースカロライナ大学チームの研究では、歯周病のない妊婦の早産率は6%だが、歯周病があって妊娠中に悪化した妊婦では43%まで跳ね上がったという報告があります。



他の研究でもおおむね7倍の出現率となるようです。

また、歯周組織で繁殖した歯周病菌は、やがて血液で運ばれて羊水の中に入ります。

免疫細胞がその菌を攻撃するのですが、その時、多様な生理活性物質が放出されます。

その中には子宮内で羊水とともに胎児を包んでいる膜(羊膜)を傷つけるものもあり、それが早産のきっかけとなるという仮説もあります。

また、早産の方の羊水の中で見つかった細菌が歯垢の中の細菌と同じものがあったという報告もあります。

早産による低体重児〔2500g未満〕は、新生児の死亡原因の多くを占めています。
先天性奇形、呼吸器障害とも関連すると言われています。

たとえ死に至らなくとも、出産後、1〜3ヶ月の入院を必要とすることが多いのです。

早産はとても怖い面があり、歯周病を治しておくことは大切なのです。

また、歯周病菌に感染することで、胎児の成長が阻害されることもわかっています。

アタッチメントロスとは歯周病の進行を表します




また糖尿病が歯周病の危険因子であることは以前から知られていました。
糖尿病が進行すると免疫機能が低下すると共に、細菌の栄養源となる糖が血液の中に多くあるから歯周ポケットの中で細菌が増殖しやすくなるためです。
しかし逆に、歯周病が糖尿病にどのような影響を及ぼすかは問題とされませんでした。

 ところが、最近になって、歯周病が糖尿病の発病や血糖コントロールに影響を及ぼすこともわかってきました。

まだ仮設に過ぎませんが、重度の歯周病において、炎症性細胞が産生するサイトカインのうち、腫瘍壊死因子-α (TNF-α)などがインシュリンの活性を阻害して、糖代謝が変化します。これによって血糖値のコントロールが不十分となり、糖尿病を引き起こすと考えられています。

歯周病の治療を完全に行うと、治療しなかった場合に比べ、血糖コントロールが改善されることが明らかになったのです。
糖尿病の患者さんで歯周病がある人は、歯周病の治療をすることによって、糖尿病の改善が見込まれる可能性も出てきたのです。検討の価値ありと思います。



がんとの関連も言われるようになっています。  食道がんの細胞には複数の細菌がいるとみられていましたが、研究チームが患者20人のがん細胞を採取し、菌種を特定するためDNAを増幅して約2000検体を分析したところ、トレポネーマ・デンティコーラという歯周病菌がが32%を占めたという報告が国立がんセンターから報告されています。

 トレポネーマと食道がんとの関連については今のところ不明ですが、同センター研究所分子腫瘍(しゅよう)学部の佐々木博己室長によれば、口腔(こうくう)から食道粘膜に下りてきたトレポネーマによって炎症が起き、それが持続すると、正常細胞のDNAが傷んで、最終的に発がんに結びつくという可能性が考えられるとのことです。

その他歯周病の細菌が直接遠くにある臓器まで運ばれて病気を引き起こすケースもあります。
病巣感染という専門用語で表現されています。



いずれにしても、歯周病の管理を充分に行うことにより、重篤な病気は予防される可能性があるのです。

また、虫歯を治さないで放置すると、対糖機能障害と貧血が起こることも報告されています。

歯の定期健診はとても重要なものなのです。

川口氏の報告によると、3年以上(平均10年)にわたり定期的な予防管理を受けるために自主的に病院を受診した人は、歯の数も全国平均よりは多く残っており、口腔状態も良好であったとのことです。

慢性口腔感染が、他の病気を引き起こすメカニズム
@細菌が血液、気管に流入し、他の部位に生着、増殖するパターン
例:誤嚥性肺炎、感染性心内膜炎、敗血症
A細菌感染による菌体成分が他の炎症疾患の増悪を引き起こすパターン
例:アトピー性皮膚炎、咽頭炎
B細菌が血液に流入し、血管、腎に炎症を起こすパターン
例:バージャー病、急性腎炎、IGA腎症
C細菌が白血球を活性化させ他の部位に炎症がおこるパターン
例:ベーチェット病、手掌膿疱症、潰瘍性大腸炎
D細菌感染によりTNF産生、プロスタグランディン産生、タンパクシトルリ化など、他の疾患に影響を及ぼすパターン
例:糖尿病、早産・低体重児、関節リウマチ
Eその他の機序
例:アルツハイマー病、胃潰瘍

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